特異値分解入門(1)
· 約5分
互いに相関を持った正規乱数のセット(多変量正規乱数)を生成すること、これが金融工学のモンテカルロシミュレーションにおいて最も重要な技術となります。 系列の正規乱数列を生成する場合を考えます。 これらの乱数列の相関構造を記述するのが相関行列と呼ばれる の正方行列 です。 最終的に
という形に分解することが目標となります(ここで t は転置行列です)。分解して得られた行列 を使って実際に相関乱数を生成する方法については、これも一般的な数値計算の教科書に載っていますのでそちらをご覧ください。
すぐ後で説明するように、この分解にはコレスキー分解を使えと、多くの教科書で教えていますが、実務上コレスキー分解ではうまくいかない場合があります。
NtRand あるいは Numerical Technologies 社の製品では相関行列の分解に特異値分解という方法を採用しています。
これから3回にわたって、なぜコレスキー分解ではダメなのか、そしてなぜ特異値分解だとうまくいくのかを説明します。
相関行列について
相関行列 は、その ij 成分が確率変数 と との相関係数 である行列です。 この定義から対角成分 は確率変数 と自分自身との相関、つまり 1 となります。また、 も定義から明らかです。
つまりこの行列は、
- 正方行列
- 成分は実数
- 対角成分は 1
- 対角成分以外は